5月と言えばタイムの季節です。南仏におけるタイムの収穫も5月に行われます。既に初夏の陽気で、うっすらとピンク色に染まった可憐な小さな花がタイムの植物全体を覆っています。
収穫は植物を傷めないように、鎌ではなく剪定ばさみで行われます。野生のタイムを収穫する場合、房が小さくしかも散在しているので摘み取りは面倒で時間がかかります。しかし、心地よいタイムの香りに包まれて行う作業は楽しく、活力と安らぎをもたらします。
タイムという名の語源は、ギリシャ語で「力」を意味する this に由来するとも、古代エジプトで遺体をミイラにする際に使われた tham という芳香植物に由来するとも言われています。また、tham のギリシャ名 thumoには「私は香る」という意味があります。
シソ科タイム属Thymus は100以上の種と変種があり、ヨーロッパ全土には50種以上が生息しています。その内の約15種がフランス原産のものです。
例えば、フランスにはイブキジャコウソウSerpoletと呼ばれるThymus serpyllum と、タイムThymus vulgaris という2つの代表的なタイム属の植物があります。
古くから南仏の人々は、同じ種類のタイムでも生えている場所の違いによって香りが異なるものが収穫できることを経験的に知っていました。
フランスでは1960年代初頭からこうした場所の変化に伴う香りのバリエーションを化学的に裏付ける研究がなされ、タイムは同じ種類、つまり同じ学名の植物でも生息している環境の違いによってエッセンシャルオイルの特性成分が大きく異なる、所謂「ケモタイプ(ケモchemo=化学、タイプtype=種類)」と呼ばれる芳香植物であることがわかりました。
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