揮発性の芳香分子で構成されているエッセンシャルオイルは、嗅覚を通じて脳を刺激(大脳辺縁系に直接作用します)したり、呼吸器官(肺)にアプロ―チすることがわかっています。
エッセンシャルオイルの心地よい香りは、リラックス感を与えたり、気分をリフレッシュさせてくれます。また、空気を清浄する働きのあるものや、呼吸を爽やかにする香りもあります。
また、樹木から抽出したエッセンシャルオイルに多く含まれるミルセン、オシメン、β‐フェランドレン、γ-テルピネンなどの成分には、環境汚染物質(ホルムアルデヒド、二酸化窒素、二酸化硫黄など)に対して浄化機能があることがわかっています。*
こうしたさまざまな働きのあるエッセンシャルオイルを空気中に拡散させて、香りを楽しんだりすることを芳香浴と言い、気分よく生活できるようサポートします。。
芳香浴にはアロマテラピーに立脚したルールがあります。芳香浴に向くエッセンシャルオイルとそうでないものがあります。
芳香浴をしていて、頭痛がしたり、気分が悪くなったり、喉や目が痛くなるなど、トラブルの原因のほとんどが、芳香浴に向かないエッセンシャルオイルを使っていたり、使用量やブレンドの配合比率に誤りがあったり、また、エッセンシャルオイルの品質自体に問題がある場合に起因しています。
◆芳香浴に用いられる主なエッセンシャルオイル
ルール①:芳香浴に適するのは、モノテルペン類(リモネン、ピネンなど)やオキサイド類(1,8-シネオールなど)、モノテルペノール類を多く含むエッセンシャルオイル。
リモネンを含むのはレモンなどの柑橘類の果皮から抽出したエッセンシャルオイル、ピネンを含むのはシベリアモミなどの主に針葉から得たエッセンシャルオイルで森林の香りがします。1,8-シネオールは別名ユーカリプトールとも呼ばれるように、ユーカリのすがすがしい香りが特徴で、鼻や気管支に心地よく感じる芳香成分です。文字通り、ユーカリラジアタやローズマリー・シネオールなどに多く含まれています。
◆芳香浴に用いられない主なエッセンシャルオイル
ルール②:フェノール系とケトン系のエッセンシャルオイルは芳香浴には使わない。
フェノール類を多く含むエッセンシャルオイル(例:タイム・チモール、オレガノなど)は皮膚、粘膜を刺激し、ケトン類を多く含むエッセンシャルオイル(例:セージ、ヒソップなど)は神経毒性(頭が痛くなったりします)があるので芳香浴には適していません。
◆芳香浴に適したエッセンシャルオイルを使っているにもかかわらず、頭が痛くなったり、気分が悪くなるなどの不都合が生じる原因。
1)エッセンシャルオイルの品質が悪い。
2)アロマポットで加熱してエッセンシャルオイルを蒸散させる場合、揮発性の高い成分だけが早く蒸散してしまい、エッセンシャルオイル全体の成分が一緒に拡散されていない。
3)加熱によりエッセンシャルオイルが焦げてしまっている。
4)エッセンシャルオイルの芳香成分が部屋に過剰に充満している。
芳香浴には、エッセンシャルオイルを加熱せずに芳香分子を微粒子にして拡散するディフューザー(芳香拡散器)を使うのが理想的です。ろうそく等で温めるタイプのアロマポットは上記 2)3)の理由からあまり勧められません。専用のディフューザーがない場合には、お湯を入れたコップやお皿にエッセンシャルオイルを垂らしたり、ティッシュに染み込ませたものを部屋に置いておくだけでも、ある程度芳香浴を楽しむことができます。
どんなに芳香浴に適したブレンドでも換気の悪い室内で長時間ディフューザーを使用していると、頭が痛くなったり、気分が悪くなったりするものです。
6畳(日本の一般家屋の場合)の部屋でしたら、5~10分間ディフューザーを使用し、30~60分間隔を空けて再使用するという程度がよいでしょう。
*大平辰朗:樹木精油成分による空気質の改善.木材学会誌 Vol.61. No.3. p.226-231(2015)