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突然変異したCinnamomum camphoraラヴィンサラ

ラヴィンサラはいわゆる「ケモタイプ」のエッセンシャルオイルで、同じ学名の植物であっても産地によって含まれる成分がまったく異なるエッセンシャルオイルが抽出されます。

 

アジア原産の植物で、日本では「クスノキ」あるいは「樟脳の木」と呼ばれています。日本のCinnamomum camphoraからは、「芳樟油」「カンファー油」あるいは「ホーリーフ油」と呼ばれているカンファー(樟脳)の含有率が50%以上のエッセンシャルオイルが抽出されます。

 

マルコ・ポーロの旅行記『東方見聞録』にもインドネシアのスマトラ島について、「樟脳、その他の香料が豊富(ランブリ王国)」「この国には世界で最良質の樟脳、すなわちファンスール樟脳を産する(ファンスール王国)」と記されています。

 

16~17世紀にかけて、Cinnamomum camphoraはアジアからマダガスカルに輸入され、植林されました。この土地によく順応しましたが、突然変異によって成分構成がガラリと変わりました。カンファ―が姿を消し、1,8-シネオール(別名ユーカリプトール)を多く含む新しい植物と言っていいほどの変貌を遂げたのです。

 

地元では、さまざまな疾患や感染症を治すことのできる奇跡の植物とされ、“Ravintsara(良い葉)”と呼ばれました。“Ravin”は葉、“tsara”は良いという意味です。そして、長い年月にわたって本来はCinnamomum camphoraであるこの植物が、Ravensara aromaticaとされていました。

 

Ravensara aromaticaは、元々はCinnamomum camphoraであったわけですから、最近になってこの間違いは訂正され、アジア産のカンファ―を多く含むものも、マダガスカル産の1,8-シネオールを多く含むものもCinnamomum camphorであるとされています。

 

Cinnamomum camphoraに限ったことではありませんが、正しい学名、産地、抽出部位、成分などの表示がいかに大切な情報であるかがわかります。

 

マダガスカル産のCinnamomum camphoraは1,8-シネオールを豊富に含み、アロマテラピーでは欠くことのできない重要なエッセンシャルオイルです。飲用、皮膚塗布、芳香浴と使用法も幅広く、作用も穏やかで、子供にも使うことができます。

 

尚、カンファーを多く含むものは使用に際し注意が必要で、アロマテラピーに使われることはほとんどありません。

 

参考文献:

Tony Burfield (2004) “Ravensara Oils” Aromatherapy Times, 1(61)

Etienne de Flacourt (2007) Histoire de la Grande Isle de Madagascar, Karthala

マルコ・ポーロ著 愛后松男 訳(2015) 『東方見聞録2』, 平凡社